社会の窓

学会でのおはなしその2。


先週行った学会(というかわたしの属する分野での学会のほとんど)では、ふたつの論文発表への参加方法があります。 一つ目は、論文を個人で提出する方法。完成した論文を特定の「分野」へ送って、学会の査読者がその内容によって4人一組の発表のためのセッションを作ってくれます。もちろん、論文を送れば発表できるというのではなく、匿名の3人の査読者から「パス」が出ればのはなしで、ここでダメだし食らうことだってあります。この個人提出の論文の中から、その分野でのトップ・ペーパー(論文1等賞みたいなもん)が選ばれます。


もう一つはパネル形式といって、4〜5人の知人やお友達などとテーマを決めて、グループ応募するものです。 たとえば、「近代資本主義と市民権の女性化」なんてテーマでそれぞれの人たちが違った論文を発表することになります。 このパネルの形で論文発表を申し込む場合、完成した論文は要りません。パネルの意図と必要性を明記した要旨(Abstractといいます)、それに各個人の論文の要旨を明記して、それを学会に送るのです。 論文が完成していなくても要旨を書くだけで応募できるし、学会までにその論文を書く時間稼ぎができるのが利点です。 その代わり、完成した論文をださないので、トップ・ペーパーの選考対象からははずれます。


大まかに、このふたつのどちらかの形を通して、発表参加に応募しますが、コミュニケーション学というってもものすごく広範囲なので、その中で細分化されている「分野」に特定して申し込みをします。女性学、異文化、クリティカル・カルチュラル・スタディーズ、レトリック理論、クイア、ラティーノ、等等、細かい分野に分かれています。 ちなみに、わたしは今年の学会ではクリティカル・カルチュラル・スタディーズの査読者でした。


で、ここでやっと私の論文発表のはなしになるのですが(前置きが長すぎるんじゃァ!)、私の発表はパネル参加でした。今までは一匹狼でできるだけ個人参加でやってきたのですが(パネルをまとめるの、めんどくさいのよね)、今年はどーしても時間がなくって、パネルで応募することに。 他のパネル参加者も、知らない人ばかりです。(これについては、また後日)。 レトリック(修辞学と日本語ではなります)という分野を専門にしているのですが、その中でも伝統的なやり方と、あたらしい考え方と分かれます。その分かれ目になってるのが、私にとってはカルチュラル・スタディーズへの姿勢だと思っています。 


ま、こまかいことはどーでもいいのですが、今回の発表で身にしみたことは、この「伝統的」かそうでないか、の違いです。 同じ分野でも、研究や分析の手法、対象が全くことなることは分かっていたけれど、これほど言葉が通じないものなんだと思いました。簡単に言うと、私がやっていることは伝統的な方法で研究している人たちには意味のないものだし、私からしてみれば他のパネル参加者の発表はつまらないわけで。 自分がやろうとしていること、そしてその価値を分かってくれる人たちとつながったところで発表していかないと、論文を通してつながりもできないし、発表をしても勉強にならないことを痛感です。 これは、私がまだまだヒヨッコなので、自分のやってることをレトリックと言う分野のコアをなしている伝統的な人たちの言葉に翻訳することがきちんとできていないということです。 


自分の研究を他の人たちの仕事とつなげていけないということは、私の責任です。独りよがりになった研究なんてつまんない。 自分を伝統的なレトリック研究の中に位置付けていくためには(それは伝統的になりたいということとは全くちがうのだけれど)、もっとフィールドの勉強をしなくちゃいけなんんだ、と謙虚になって帰ってきました。 


学会では、新しい人と知り合ったり、「おぉ!」と思える論文発表を聞いて勉強になったりいいこともあるけれど、相手をバカにした冷笑や失礼だなぁとおもう高飛車な態度に出会うことも多々。 そんな嫌な面に接して、「ふん、クリティカル・セオリーわかんないくせに」とか「いまだにそんなことやってんの?」なんて思ってきたけれど、高飛車な人に対して、高飛車な態度でその意見をバカにしてたら、何も学ばないもんね。 今度の学会では、それも相手に分かるように、つなげていけるように、そういう言葉で書けてない自分の責任なんだろうなぁと考えるようになりました。  自己責任を強調するなんて、わたしもネオリベ化してきたのかしら?(笑) (←わかんねーひとには、わかんねーっす。通り過ぎてください)


いろんな課題ができたので、そういう意味ではいい学会参加をしたのかなと思ってます。来年はどんなことを頭に入れて参加すればいいのか、わたしが何を学会に求めるか、がはっきりしたので、収穫ありうです。


学会がやっと終わったと思ったら、来年の発表の締め切りは2月です。はぇーつぅーの!  これからない知恵しぼって、来年のための論文に取り組まねば。 ホントに、ビンボー暇なしだわよ。