社会の窓

就職が決まって以来、日本の家族やお友達に、どういう肩書きになるのかとよく聞かれます。 何回かに分けて、アメリカの大学の雇用形態について書いてみようかと思います。


(1)Tenure track OR Non-tenure track
日本の大学制度で言うと、常勤か非常勤の区別になります。会社でいうと正社員か契約社員か、ということになります。 日本の大学のほとんどは終身雇用ですので、常勤(専任ともいうのかな)の先生になると、よっぽど犯罪を犯したりしないかぎり、首になることはありません。 常勤で採用されると、終身雇用がもれなくついてくるわけです。


アメリカの大学の場合、この終身雇用制度はデフォルトでついてくるわけではありません。大学か終身雇用を保証してくれるかどうかというのは、常勤として採用されてから5〜6年後に総合的な評価があり、これをパスしなければいけません。 これをテニュア制度といます。テニュアとは、5〜6年後に行われる総合評価で、主に研究(論文を何本発表したか)、教育(どんな評価を生徒からえているか)、サービス(大学のためにどんなことをしているか)が問われます。 常勤採用では、終身雇用の確保のために、5〜6年分の業績を積み重ねなければいけません。 


これと比較して、ノン・テニュア(非常勤)での採用の場合、1〜3年契約で、終身雇用の可能性はありません。 そのかわり、研究などの業績もあまり問われません。 言い換えると、どんなに業績を伸ばしても、終身雇用には繋がらないので、そのの保証がほしければどこかの大学でテニュア(常勤)採用になるしかありません。 研究分野によっていろいろですが、新卒で常勤採用はムズカシイので(他の業績のある先生たちと就職競争しているわけですから)、この非常勤を何年かしたあとに、どこかの大学で常勤採用を狙うというのが一般的なパターンのようです。 


非常勤と常勤の差は、終身雇用の可能性のほかにも、年俸から福利厚生面まで、ものすごくあります。大学院を卒業する多くの人たちにとって、この常勤のお仕事をもらうことが、まず第一のハードルになります。 


もちろん、お給料は少ないけれど、非常勤で気楽に生きていきたいという人もたくさんいます。たまに、常勤のほうが『えらい』と勘違いしている人に会いますが、自分のやりたいことや生活のスタイルによって選べはいいことなので、常勤・非常勤の区別に勝ち組み・負け組のような社会的価値をつけることは、もちろん無意味です。 


私と彼はアメリカではふたりとも外国人なので、ふたりのビザの保障を考えたとき、どちらかが常勤である必要があるので、ふたりとも常勤をめざして就職活動してました (この点については、また後日)。 その結果、私が常勤のお仕事を見つけることができたので、彼がついてくることになりました。 現在、彼の非常勤の口を探しているところです。 二人のどちらかが主な収入源になればいいと思っていたので、男だから女だからと社会的に(比較的)問われないアメリカだから、できることかもしれません。 そういうことを気にせずに若い人たちが就職できる社会空間が日本でも育つといいですね。