社会の窓 Fearless Speech

最近、米国議会の下院議会(the House of Representaives)が新しい移民法に関する法案(HR4437)を可決しました。 上院(the Senate)でも可決されなければ立法化されないのですが、この新しい法案をめぐって、アメリカでは熱い議論が交わされています。


特に共和党(保守)が躍起になって通そうとしているこの法案、不法移民の処置についてのもので、具体的には不法滞在のメキシコ人を明確に念頭に置かれたものです。 いろいろ細かいところもあるのですが、基本的には

  • 不法滞在の移民に対するきびしい処置を課し、
  • また不法滞在移民への救済を非合法化する

というものです。


簡単に言うと、「協会、慈善団体、非営利団体など、不法移民へ救済の手を伸べる人たちは、彼らの存在を助長するので、国の利益、また安全・治安をそこなう行為なので、そのような手を差し伸べるような行為は違法行為とみなされるべきだ。」というものです。


ということは、例えば不法移民の女性が家庭内暴力から逃げてシェルターに身をよせたり、交通事故にあった不法移民の人を病院で手当てしたり、不法移民の子供のハラがへって死にそうでも、食べ物をあげたりすることは、すべて違法行為になります。


アメリカはその労働力の多くを不法労働者に頼っています。カリフォルニア、ニューメキシコ、その他のたくさんの州で、多くは農産物の収穫などの肉体重労働を低賃金でおこなっています。 不法労働者なしではアメリカの経済は機能しないとさえまでいわれています。


しかし、実際の現実を問わず、犯罪や治安の悪化の汚名をかぶせられ、法的身分関係なく段別的に差別されるのも、メキシコ人です。特に、メキシコ人は「不法労働者」のレッテルを貼られるのが常です。


現在審議中のこの法案も、そんなメキシコ人に対する偏った考えが原動力の一部となっているものです。


共和党の中でも、この法案に関しては二分していて、上に述べたような経済的視点から反対する派と、『国の治安』のために賛成する派とあり、党内部で争っています(勝手につぶしあえばいいと私は思っています)


この法案に反対する集会がカリフォルニアをはじめ、いろんな州でおこなわれ始めました。アメリカの歴史で移民に関するデモ・集会で最大級のものです。3月末におこなわれた反対ラリーでは50万人の人があつまりました。 ミネソタ州の州都セント・ポール(St. Paul)でも、今日3万人以上が州の議事堂前に集まりました。私もマイケルと一緒にこのラリーに参加してきました。


ラリーのなかで、ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)の一人が演説していたのが印象的です。なぜネイティブ・アメリカンがメキシコ人の移民問題と連携しているのかすぐにはわからなかったのですが・・・・


このネイティブ・アメリカンの人が、

「おれらは『移民』じゃない!」とアジって、南北アメリカ大陸にインディアンの(どれかの部族の)シンボルと、アステカ王国の(たぶん)シンボルが描かれたポスターを高く掲げていました。


つまり、ネイティブ・アメリカンもメキシコ人も、アメリカ大陸のもともとの先住民であり、『移民』はヨーロッパ系の人たちである。だから、移民法は、現在『アメリカ人』としてあべこべにメキシコ人を移民扱いしている、ヨーロッパ系の彼ら『移民』たちを規制するべきなのだ! とのこと。


アメリカという「国」を単位とした視点から、「大陸」へと視点を移すことで 『移民』という言葉の意味を逆転。 


はぁ〜、ナルホド! と感心。

それ以上に、「恐れることなく」思うことをマイクに向かって大きな声でいえるということは、すごいなぁと思う。


信条はなんであれ、信じていることを堂々と言うことって、恐れないことって、すごく難しいことだと思う。わたしは、いったいいつ、自分の思っていることを「おそれることなく」言ってるのだろう。