社会の窓

院生のときに同期だったティム。
背が195ぐらい高くって、立ってしゃべってると見上げている首が痛くなってたんだよね。 


ノースウエスタン大学(名門ですな)で修士をして、そのあと



マリファナ遣り過ぎちゃってさー、追い出されたよー」



みたいなことをサラリと笑いながら話すような人で、すんごい陽気で、心底いい人。 



ビンボーで葬儀社でバイトしているときに、棺桶から花を抜き取って花束を作って当時は彼女だった奥さんにわたしてたとか(笑)、バイクで猛烈にぶっ飛ばすのが好きで「いつか猛烈なスピードで壁にぶちあったって痛みなく一気にいきたい」なんて言ったり、この世で一番大切なのは家族だから他の州では仕事は探さないんだとか、言ってたなぁ。



どんな悪口を言っても不思議とそれがユーモア混じりに聞こえるような、そんな声を持っていて、そして大学院の中にいた誰よりも暖かい倫理観を持った人でした。



「いやー 今日の学内プレゼンさ、あの教授のうんこ野郎ったら! ⚪⚪君の発表にすっげー斜めから嫌味なことネチネチいじめてて、おりゃー、もう、頭きたのってなんのって!」 


そんな怒っているときでも、ユーモア間に溢れたひとで。




やつは数ヶ月前に自殺してしまいました。




数年前から何かかの病気で慢性の痛みを抱えていて、そのために仕事を辞めざるを得ず、傷害者保険を申請していたのですが、それが断られたとき、ずっと彼と追いかけごっこをしていた悪に追い越されちゃいました。 



いつも、彼の中に堂々と居座ってた闇のようなもんの、ほんの一歩先、ほんの一歩先だけを歩いてたティム。 



あんなに家族思いで、家族が世界の中心で、奥さんのベスをそりゃあもうこっちが恥ずかしくなるぐらいべた褒めだったのに、彼女と二人の息子を残して行っちまいました。




学術用語辞典のためにエントリーを書く話があって、その一つが彼の専門分野だったので、久しぶりにメールで話したのが今年の初め。 しばらく病気のこととか保険会社のばかやろーのこととかで研究から手が離れてたから、すっげーいい機会だって張り切ってたくせに。 



ティム、おつかれ。
あたしは君に会えてすっごく良かったよ。あたしは君の真面目なんだかおちゃらけているんだか分からない声とか、わっはっはっはーって笑う豪快さとか、ぶれない価値観とか、大好きだった。



そっか、あんたはこれから年を取らないんだ。皺も白髪も増えないんだね。


いつかあたしは君より年上になるだろうけど、あたしはこれからも君のことを見上げていくよ。 



君が大好きだったおばあちゃんとお母さんに再会して、笑っていることを祈ってる。 おつかれ。 You don’t need to beat the demon anymore.